松嵜正實 他

2010年7月2日

財団法人 三友堂病院医学雑誌 Vol.1 No.1

症例報告

乳房温存(大内式再建)術後、妊娠と患側授乳に成功した1例
A successful case of pregnancy, delivery and lactation after breast conserving surgery.

三友堂病院 外科

松嵜正實、川村博司、大道寺浩一、横山英一、宮津清、仁科盛之

山形大学医学部 第一病理

山川光徳

岩淵婦人科医院

岩淵慎助

Key word:乳房温存手術、乳癌術後妊娠、患側乳房、乳汁分泌

要約

 乳房温存手術後に妊娠出産と患側乳房からの授乳に成功した例を経験した。症例は、36歳で1児の母。左乳房CD境界領域に腫瘤を認め生検によって悪性と診断し1999年10月1日左乳房温存手術(Bq Ax)を施行した。組織学的には、非浸潤性乳管癌でリンパ節転移は認められず、切除断端に癌露出は認められなかった。したがって術後補助療法は行わないこととしたが妊娠は術後2年間は控えるように指導していた。しかし術後4か月目に妊娠していることが判明し、その後は厳重な経過観察を行い、2000年9月に無事健常女児を出産した。患側乳房から乳汁分泌がみられ現在も健存で授乳を行っている。
乳癌術後の妊娠については、明確にされていない様々な問題がある。報告症例が少ないことがその大きな要因であると思われる。今回本症例を含めて乳癌術後の妊娠に関する問題点について検討した。