遠藤 智子 他

財団法人三友堂病院医学雑誌 Vol.11 No.1

症例報告

     慢性閉塞性呼吸器疾患の急性増悪における非侵襲的呼吸管理の有用性と
チーム医療の重要性を示した一症例

A case showing the effectiveness of non-invasive positive pressure ventilation and the importance of the team approach for an attack of dyspnea due to chronic obstructive pulmonary disease

                       三友堂病院 呼吸管理チーム
三友堂病院 看護部
遠藤 智子、長谷川 尚美
三友堂病院 リハビリテーション部
菊地 由加里
三友堂病院 栄養管理部
野間 祥子
三友堂病院 呼吸器内科
池田 英樹

Key words: 慢性閉塞性呼吸器疾患(COPD)、非侵襲的呼吸管理(NPPV)、チーム医療、
包括的呼吸リハビリテーション、自立支援

Respiration Management Team

Tomoko Endo1),Naomi Hasegawa1),Yukari Kikuchi2),Shoko Noma3),Hideki Ikeda4)

1)Department of Nursing, Sanyudo Hospital
2)Department of Rehabilitation,Snyudo Hospital
3)Department of Medical Technology,Nutrition Management Room,Sanyudo Hospital
4)Department of Respiratory Desease, Sanyudo Hospital

要約


慢性閉塞性呼吸器疾患(chronic obstructive pulmonary disease,以下COPD)の急性増悪期には生命の危機が生じ、患者、家族ともに大きな不安を抱える。急性期の症状を緩和し、病状の安定を図り、在宅療養へ導いていくためには、患者が正確な病状認識を持ち、治療やケアを受け入れることが重要である。今回、CO2ナルコーシスを呈し、急性呼吸不全となって集中治療室へ入室した80歳代のCOPD男性患者に対して、非侵襲的陽圧呼吸(non-invasive positive pressure ventilation、以下NPPV)による呼吸管理を行った。気管内挿管を伴わない、非侵襲的呼吸管理を施行したことによって、患者とのコミュニケーションを保ちながら、呼吸管理チームの多職種のスタッフが早期から介入でき、意識レベルの改善後、包括的呼吸リハビリテーションを開始した。チームの介入によって、併存する肥満、糖尿病そして睡眠時無呼吸症候群に対して、患者の意欲を保ちながら効率的に治療とケアを進めることができた。その結果、併存病態の改善に結びつき、COPDの急性増悪期から離脱した。さらに、病状の改善と同時に、患者は治療やケアの必要性を理解し、在宅療養への移行も順調に行うことができた。COPDの急性増悪期に、NPPVを用いた早期からの積極的な治療と呼吸管理チームによる包括的呼吸リハビリテーションは、呼吸不全の改善のみならず、患者の自立支援としても有効であった。