牧野孝俊 他

財団法人三友堂病院医学雑誌 Vol.10 No.1

原著

当院における皮下埋め込み式中心静脈カテーテルポート留置症例39例の検討
Analysis of 39 cases implanted central venous access devices in Sanyudo hospital

三友堂病院外科

牧野孝俊、横山英一、川村博司、仁科盛之

三友堂病院緩和ケア科

加藤佳子

Key words: CVポート、合併症、カテーテル断裂、化学療法、がん終末期医療

Takatoshi Makino1), Eiichi Yokoyama1), Hiroshi Kawamura1), Moriyuki Nishina1), Yoshiko Kato2)

1)Department of Surgery, Sanyudo Hospital
2)Department of Palliative care, Sanyudo Hospital

要約

 近年、化学療法または在宅中心静脈栄養を目的に、皮下埋め込み式中心静脈カテーテルポート(Central venous port: CVポート)留置症例が増加している。当院において、2008年1月1日から2008年12月31日までの1年間で、CVポート留置を施行した症例は39例であった(観察は2009年4月30日まで行った)。留置目的別では、化学療法が37例、在宅中心静脈栄養が2例であった。留置部位は、右鎖骨下が21例(54%)、左鎖骨下が18例(46%)であり、患者の希望やQuality of life: QOL、たとえば、利き手、シートベルトの位置などに配慮してできるだけ生活面で支障がないように決定された。CVポート留置は、手術時間の平均が22分(15~33分)であり、比較的低侵襲であると考えられた。留置術施行時の気胸などのトラブルは認めなかったが、合併症としては留置後のポート感染を2例(5.1%)、カテーテル断裂を1例(2.6%)、滴下不良症例を1例(2.6%)に認めた。カテーテル断裂症例では、早期にInterventional radiology(IVR)の手法によってカテーテルを抜去し、重大な合併症に至らなかった。一方、CVポート留置によって、化学療法薬剤の漏出事故および静脈炎を回避できた。化学療法の安全性が高まり、患者と医療スタッフの負担やストレスが軽減した。CVポート留置症例のうち30.7%は癌の進行により、経口摂取困難となった。この場合、CVポートを静脈栄養経路として利用できるので、入院あるいは在宅における終末期の輸液管理が容易となり、がん終末期医療においても有用であった。