尾形 貴史 他

財団法人三友堂病院医学雑誌 Vol.12 No.1

症例報告

手術と化学療法により寛解を維持している家族性大腸腺腫症例術後デスモイド腫瘍の1例
A case of familial adenomatous polyposis postoperative desmoid tumor maintained remisssion state under operation and chemotherapy

尾形 貴史、川村 博司、横山 英一、仁科 盛之

三友堂病院 外科

Key words:デスモイド腫瘍、手術療法、化学療法、家族性大腸腺腫症

Takashi Ogata, Hiroshi Kawamura, Eiichi Yokoyama, Moriyuki Nishina

Department of Surgery, Sanyudo hospital

要約


症例は45歳男性。43歳時、家族性大腸腺腫症(以下FAP)に対して、他院で大腸全摘術を施行された。44歳時、当院で小腸瘻閉鎖術を施行し、その後外来で経過観察を行っていたが、FAP術後約1年6か月に腹部腫瘤を認めた。画像診断上、確定診断は困難であり、外科的切除の方針となった。腫瘍は腸間膜より発生したものと考えられ、腸間膜血管を巻き込み、後腹膜へ浸潤性に発育していたため、腫瘍の全切除は困難であり、腫瘍を可及的に切除した。病理組織学的検討により、デスモイド腫瘍と診断した。術後、残存腫瘍に対しDoxorubichin/Dacarbazine併用化学療法(Doxorubicin: 20mg/m2/日、Dacarbazine: 150mg/m2/日を4日間点滴投与し、24日間の休薬、これを1コースとした)を4コース施行し、残存腫瘍の縮小を認めた。しかし、1年後に腫瘍が再び増大したため、同様の化学療法を再度4コース施行した。CT上腫瘍は認めるものの増大傾向はなく、現在2回目の化学療養より3年を経過しているが、寛解状態を維持している。デスモイド腫瘍は、組織学的に悪性所見を欠き良性腫瘍に分類されるが、浸潤性の発育形態をとることから、腸間膜に発生した場合に大量の腸管切除や周囲臓器の合併切除が必要になることや、治癒切除が得られた場合でも再発することが多く、臨床的には悪性の経過をたどる傾向がある。今回我々は、手術と化学療法により寛解状態を維持しているFAP術後デスモイド腫瘍を経験したので、文献的考察を加え報告する。