川村 博司 他

財団法人三友堂病院医学雑誌 Vol.12 No.1

原著

   消化器癌に対するステント留置術の緩和的治療としての意義に関する検討
Evaluation of the palliative effect of the self-expandable stents in the management of malignant bowel and biliary obstruction.

川村 博司1)、横山 英一1)、尾形 貴史1)、仁科 盛之1)、加藤 佳子1)、黒田 美智子2)、吉田 美代子2)、鈴木 明彦3)、八木 周3)

1) 三友堂病院 地域緩和ケアサポートセンター 診療部
2) 三友堂病院 地域緩和ケアサポートセンター 看護部
3) 三友堂病院 消化器内科

Key words:消化器癌、消化管ステント、経皮経肝胆道ステント留置術、緩和医療、
在宅療養

Hiroshi Kawamura1), Eiichi Yokoyama1), Takashi Ogata1), Moriyuki Nishina1), Yoshiko Kato1)
Michiko Kuroda2), Miyoko Yoshida2), Akihiko Suzuki3), Makoto Yagi3)

1) Medical department Sanyudo regional palliative care support center
2) Nursing department, Sanyudo regional palliative care support center
3) Department of gastroenterology, Sanyudo hospital

要約


がん患者の在宅療養移行と継続に消化器症状の管理は大きく関わっている。当院では、消化管や胆道の閉塞症状を伴う切除不能消化器癌(食道、胃、肝・胆道・膵、大腸)症例に対してステント留置術を施行してきた。今回、ステント留置術の緩和的治療としての意義について倫理的配慮のもとに検討した。対象は、平成18~22年の5年間にステント留置術を行った消化器癌症例42例(ステント再挿入を10例で行ったため件数としては52件、また35例がSt.Ⅳ)である。これらに対して、閉塞部位別に、Performance Status(PS)、QOL、在宅移行、生存期間について検討した。その結果、食道・胃・十二指腸ステントは16例17件行われ、内13件で経口摂取が再開、嘔気、嘔吐が改善し、施行後20~301日生存した。結腸・直腸ステントは3例に行われ、1例で長期生存が得られた。胆道ステントは25例33件行われ、30件で減黄に成功してドレナージチューブは抜去され、QOLが改善し、43~474日生存した。経皮経肝胆道ステントが28件であったが、本手技は低侵襲で安全性、簡便性、確実性にすぐれ、PS3~4であっても施行可能であった。ステント留置術施行52件中44件で在宅移行が可能となった。ステント留置術は経口摂取再開、嘔気・嘔吐改善、在宅療法移行また療養期間延長といった症状緩和とQOLの向上に結びつき、緩和的治療として有効であった。