山田和彦 他
2010年7月2日
財団法人 三友堂病院医学雑誌 Vol.2 No.1
原著論文
腹部外科緊急手術症例、特に術前SIRSを呈する症例の病理学的特徴について
Clinicopathological findings of systemic inflammatory response syndrome (SIRS) cases at emergency abdominal surgical operation.
癌研究会附属病院外科 |
山田和彦 |
三友堂病院外科 |
川村博司、松嵜正實、大道寺浩一、横山英一、仁科盛之 |
山形大学医学部第一病理 |
山川光徳 |
Key word: SIRS、腹部緊急手術、炎症性細胞浸潤
要約
外科手術は生体に多大な侵襲を与える。今回我々は腹部外科手術症例中、特に緊急手術症例について、その臨床像と摘出標本における病理組織学的所見との相関について検討した。症例を術前からSIRSを呈していた群(7例)とnon-SIRS群(9例)に分け比較した。それぞれ病理学的所見の程度(うっ血、浮腫、炎症性細胞浸潤の程度、炎症の部位)や種々の臨床的因子について検討した。両群とも切除腸管では粘膜下層の浮腫や静脈のうっ血を広範囲に認めた。SIR群では粘膜下層以深、特に漿膜への炎症性細胞浸潤がnon-SIRS群に比較して強かった。SIRS群のうち、特に病理組織学的に炎症所見が高度な3例で術後重篤な臓器障害が生じた。
術前SIRSを呈する症例では病理組織学的に消化管漿膜側の炎症性細胞浸潤が見られ、その程度が強いものは術後に臓器不全を発生する可能性が高いと考えられる。