吉田美代子 他

2006年4月13日

財団法人 三友堂病院医学雑誌 Vol.1 No.1

症例報告

患者接遇改善により満足な緩和ケアをなし得たと思われる末期癌患者の1例
A successful case of the palliative care for a terminal cancer patient by the improvement of the patient-medical staff communication.

三友堂病院 看護部

吉田美代子、三浦信枝、鈴木さよ子、梅津陽子

三友堂病院 外科

川村博司、松嵜正實

三友堂病院 麻酔科

飯澤和恵

三友堂リハビリセンター 薬剤部 

大石玲児

Key word:緩和ケア、患者接遇、チームアプローチ、モルヒネ

要約

 大腸癌術後肝・膵転移のため癌性疼痛による活動性低下があり、臥床を余儀なくされ、さらに呼吸状態の悪化等全身状態の低下が進行しつつあった患者の緩和ケアにおいて、医療者の患者接遇を改善し、チームアプローチを展開し、患者と医療者の信頼関係を築いたことが、患者の苦痛緩和に結びついたと思われる症例を経験した。本患者は、苦痛が増悪し、癌性疼痛に対し行っていた塩酸モルヒネ持続静注投与量が漸増し、1日2,500mgに達した時期に、「看護が形式的、機械的である。」との苦情を訴えた。スタッフは、これをきっかけに「患者の言葉を傾聴する」という患者中心の医療へ立ち返ることを目的にオープンクエスチョン方式で患者接遇を行い、また、医師、看護婦(士)、薬剤師、栄養士、理学療法士によるチームアプローチを行い、入浴、食事などなるべく日常生活に近い環境を作ることに努力することとした。これら積極的なケアを行うことによって、その後患者の表情が穏やかになり、QOLも得られ、患者・家族と医療者との信頼関係を保つことができるようになった。最大1日3,500mgまで達したモルヒネ大量投与による副作用もなく、臨終に近づいても患者とのコミュニケーションを確保でき、患者の意思を尊重した良好な緩和ケアを行うことができた。