加藤 佳子 他
財団法人三友堂病院医学雑誌 Vol.12 No.1
総説
緩和医療up to date:緩和ケア病棟の役割はこのように変わった
-「緩和ケア」を正しく理解して上手に利用してもらうための取り組み-
Up to date on the role of palliative care unit
加藤 佳子1)、川村 博司1)、加藤 滉2)
1) 三友堂病院地域緩和ケアサポートセンター 診療部
2) 三友堂病院麻酔科
Yoshiko Kato1), Hiroshi Kawamura1), Akira Kato2)
1) Medical Department, Sanyudo regional palliative care support center
2) Department of anesthesiology, Sanyudo hospital
要約
「緩和ケア=がんで死が近づいた終末期の患者に行われるケア」と勘違いしている人が、患者にも医療者にもまだ少なくない。この“誤解”は、世界保健機関(WHO)の責任でもある。1986年に『がんの痛みからの開放-WHO方式がん疼痛治療法-』1)を公表した4年後、1990年にWHOは『がんの痛みからの開放とパリアティブ・ケア』2)を発刊した。そのなかで、「緩和ケアとは、治癒を目的とした治療に反応しなくなった疾患を持つ患者に対して行われる積極的で全体的な医療ケアであり、痛みのコントロール、痛み以外の諸症状のコントロール、心理的な苦痛、社会面の問題、霊的な問題の解決がもっとも重要な課題となる」と述べている。この“治癒を目的とした治療に反応しなくなった”という言葉が、「緩和ケア=終末期のケア」の誤解を招いてきた。そこでWHOも2002年に定義を改訂し、「緩和ケアは生命を脅かす疾患に起因した諸問題に直面している患者とその家族のQOLを改善するアプローチで、痛み、その他の身体的、心理的問題、スピリチュアルな諸問題の早期かつ確実な診断、早期治療によって苦しみを防止し、苦しみから解放することを目標とする」とした3)。ケアの対象を“患者とその家族”に拡大するとともに、特に早期診断・早期治療の重要性を強調している。しかしなお、前述した“誤解”は改まっていない。
本稿では、このような“誤解”を解き、緩和ケアを正しく理解して緩和医療と緩和ケアを上手に利用してもらうために、三友堂病院地域緩和ケアサポートセンターを中心に行っている取り組みを紹介する。