青野 豪 他

財団法人三友堂病院医学雑誌 Vol.11 No.1

原著

         当院における頸動脈ステント留置術(CAS)の急性期の成績

Short-term result of carotid artery stenting in our institution

                         三友堂病院 循環器内科
青野 豪、川島 理、阿部 秀樹
三友堂病院 脳神経外科
新宮 正

Key words: 頸動脈ステント留置術、頸動脈狭窄、頸動脈内膜剥離術

Go Aono1),Osamu Kawashima1),Hideki Abe1),Tadashi Shingu2)

1)Department of Cardiology, Sanyudo Hospital
2)Department of Neurosurgery,Snyudo Hospital

要約


以前より高度頸動脈狭窄は同側の脳梗塞の原因として重要視されており、脳梗塞の初発、再発を予防する目的で、内科的治療に加え頸動脈内膜剥離術(carotid endarterectomy : CEA)が行われていた。今日高齢化社会の実現とライフスタイルの欧米化に伴いわが国においても動脈硬化症に起因する疾患は増加の一途をたどっており、頸動脈狭窄にともなう脳卒中の発生も例外ではない。2008年4月より、頸動脈ステント留置術(carotid artery stenting : CAS)が薬事承認ならびに保険収載された。多くの臨床試験の結果から、今後CEAの代替療法となる可能性もあり、有望な治療法と思われる。当院においても2008年12月から頸動脈ステント留置術実施基準を満たした上で施行を開始した。2008年12月から2010年3月までの16ヶ月間にCASを19人20例に施行した。対象症例はSAPPHIREの基準、また、わが国で作成された適応基準に則り選別したため、CEAの適応とならない高いリスク群が対象となっている。全例にステント留置を行い、残存狭窄が30%以下に改善した初期成功率は19例/20例(95.0%)であった。不成功例1例に対しても同症例は右総頸動脈の解剖学的奇形を伴っていたため、アプローチ部位を右大腿動脈に加え、右上腕動脈からカテーテルを追加挿入し、再度手技を行い成功している。初期成績に関しては、30日以内の死亡、心筋梗塞の発生はなく、臨床症状の軽度残存した脳卒中の発生は1例/20例(5.0%)のみであり、一過性脳虚血発作の発生は1例/20例(5.0%)であった。現在、術前の血管造影所見、画像所見、頸動脈エコー所見を参考にし、CASの計画をたてており、手技に関しては末梢塞栓症予防のためCAS全例に血栓吸引を追加し、ステントの高圧拡張を行わないなど、手技の安全性の向上、改善を図っている。今後CAS症例数はますます増加していくものと考えられ、さらなる安全性を確立するために、他施設との共同研究、大きな母集団に基づく研究、また、長期の観察が必要であると考えられる。