安孫子真 他

財団法人三友堂病院医学雑誌 Vol.13 No.1

                          東日本大震災によせて

特別寄稿

                 放射線の人体への影響および放射線防護の基礎
The influence of radiation on the human body and the elementary knowledge of radiological protection

安孫子 真、渡部 保明

三友堂病院 医療技術部 放射線室

Key words: 放射線、被曝、確定的影響、確率的影響、放射線防護の3原則

Shin Abiko, Yasuaki Watanabe

Department of Medical Technology, Section of Radiology, Sanyudo Hospital

要約

 福島第一原子力発電所の事故以降、放射線被曝は社会的に大きな関心事となり、医療現場においても放射線被曝について数多くの質問が寄せられるようになった。その質問の多くは放射線に対する不安や正しい知識の欠如からくるものである。医療従事者は患者の不安に対して正確な知識をもって対応しなければならない。
医療で用いられる放射線は、患者個々に対して、メリットがリスクを大きく上回る場合にだけ放射線を利用し、できるだけ最小の線量で検査を行うように管理されている。放射線が人体に及ぼす影響は確定的影響と確率的影響の2つに分けることができるが、通常の放射線検査ではこれらの影響を心配する必要のない線量で行われている。医療従事者も放射線検査に従事した際に被曝する機会がある。医療従事者の被曝の原因のほとんどが散乱線によるもので、それを少しでも低減する方法として被曝低減の3原則(時間、距離、遮蔽)がある。この被曝低減の3原則を行使することで、問題にならないレベルまで被曝線量を抑えることができる。