鈴木武文 他

財団法人三友堂病院医学雑誌 Vol.13 No.1

                                    臨床研究

症例報告

Segmental Arterial Mediolysis (SAM)によって形成された中結腸動脈交通枝動脈瘤破裂の一例
A case of ruptured aneurysm of the branch of middle colic artery due to segmental arterial mediolysisi

鈴木 武文1)、川村 博司1)、横山 英一1)、仁科 盛之1)、蜂谷 修2)、尾形 貴史2)、平井 一郎2)、木村 理2)、大木 望3)、豊口 祐樹3)、大道寺 明子3)、菅井 幸雄3)、吉村 幸浩4)

1)三友堂病院 外科
2)山形大学 医学部 第一外科
3)山形大学 医学部 放射線診断科
4)山形大学 医学部 第二外科

Key words: Segmental Arterial Mediolysis (SAM)、腹部内臓動脈瘤、急性腹症、腹腔内出血          コイル塞栓術

Takehumi Suzuki1), Hiroshi Kawamura1), Eiichi Yokoyama1), Moriyuki Nishina1),
Osamu Hachiya2), Takashi Ogata2), Ichiro Hirai2), Wataru Kimura2), Nozomi Oki3),
Yuki Toyoguchi3), Akiko Daidouji3), Yukio Sugai3), Yukihiro Yoshimura4)

1)Department of surgery, Sanyudo Hospital
2)First Department of surgery, Yamagata University Faculty of Medicine
3)Department of Diagnostic Radiology, Yamagata University Faculty of Medicine
4)Second Department of Surgery, Yamagata University Faculty of Medicine

要約

 Segmental Arterial Mediolysis (SAM)は腹部内臓動脈の中膜が分節性に融解し、動脈瘤を形成して破裂する特徴を持つ疾患で、現在まで236例の報告がある。今回われわれはSAMによって形成された動脈瘤破裂による急性腹症の一例を経験したので文献的考察を加えて報告する。症例は51歳男性で、2012年3月、腹痛が出現し、当院救急外来を受診した。理学的所見が軽微で、整腸剤を処方されて経過観察となった。しかし、その後も腹痛が軽快しないため、CTを施行された結果、異常所見を指摘され、当科紹介となった。来院時のバイタルサインに異常は見られなかった。左下腹部を中心とした高度な自発痛、圧痛を認めた。CTでは左腹腔を中心に巨大な腫瘤を認めた。この腫瘤はMRIでT1低信号、T2高信号であった。MRI終了直後、突然、意識レベルが低下して、ショック状態となり、緊急入院となった。集中治療室で循環管理を行い、翌日にはショック状態から離脱した。入院後3日目に、腹腔動脈解離および背側膵動脈瘤破裂による腹腔内出血と診断され、集学的治療を目的に高次機能病院へ転院となった。転院後、SAMによって形成された中結腸動脈交通枝動脈瘤破裂と診断され、中結腸動脈左枝の選択的血管造影下にコイル塞栓術を施行された。その後退院して社会復帰を果たした。